『子どもが生まれたら犬を飼いなさい』
子どもが生まれた犬を飼いなさい
子どもが赤ん坊の時は子どもを守ってくれ
子どもが幼少期には良い遊び相手になり
子どもが少年期の時には親友になり
子どもが思春期の時には『命』の大切さを教えてくれるでしょう。
イギリスの諺
ジャックとの出会い
それは30年程前の話。
僕が初めて犬を飼ったのは幼稚園に入る前。4歳くらいだったと思います。
祖母の近所の家で子犬がたくさん産まれたと聞いて見に行った時です。
僕は子犬を一匹
「連れてかえる。」
と駄々をこねて抱っこして離しませんでした。
結局、母が折れて自宅に連れて帰ることになりました。
連れて帰ってきた子犬が『ジャック』です。
雑種の『ジャック』
当時は犬が産まれたら近所の人たちが引き取り、育てるというのが一種のステータスのような感じで存在していたと思います。
僕は連れて帰ってきた子犬の名前を3歳年上の兄と相談しました。
僕はゴレンジャーみたいな名前を提案しましたがあっさり却下され、『ジャックと豆の木』から『ジャック』と名付けられました。
ジャックの成長
小さな頃から一緒に遊んだジャックの成長は凄まじく、4歳の僕が抱っこして連れて帰ってきたのにどんどん大きくなりました。
フランダースの犬くらいの大きさに成長し、僕が背中に乗っても大丈夫なくらいガッチリとした犬でした。
ジャックはとても賢く、全く吠えないし全然噛みません。僕には甘噛みもしません。
近所の女の子がウチに遊びに来る時に、家の前でジャックの姿を見て怖がって入れなくなるのが信じられませんでした。めちゃくちゃ大人しくて吠えることも飛びかかることもしないジャックの、何が怖いのだろうと不思議でした。
親友との別れ
数年がたち、親友となった僕とジャックに突然の別れがやってきます。
ジャックが親戚の家に行くことになったのです。もちろん僕は反対します。
どうしてジャックを親戚の家に連れて行くのか?
なんで別れなきゃいけないのか?
最初の約束は1ヶ月だけでした。だから僕はしぶしぶOKを出しました。
しかし一向にジャックは帰ってきません。1ヶ月たっても2ヶ月たっても帰ってきません。
大きくなりすぎたジャックは我が家の負担になっていたようです・・・。
今思えば、やんちゃな僕たち兄弟2人を育てながらジャックも育てるのはかなり大変な行為だったと思います。
子どもだけで散歩に連れて行くことも出来ません。
僕たちが散歩に行こうにもジャックが走り出すと、止めることもできず、ただ引きずられていたからです。
再会
ジャックに会えたのは夏の暑い日でした。
照りつける太陽がとても暑くアスファルトを焦がします。車のクーラーはゴーゴー音を立てながら国道を走ります。
僕たちは車に乗って親戚の家に、ジャックに会いに行きました。
スペアリブの骨を持って行くと、とても喜んだジャックは高い窓枠を飛び越えて部屋に飛び込んできました。
僕に覆いかぶさるように飛びかかってきたジャックはあっというまに骨を食べ、僕の顔を手を舐め回します。ヨダレがすごいです。
僕たちは親友との再会をめちゃくちゃ喜んでいました。
あっという間に別れ
もちろん僕はジャックを返してとは言いませんでした。
親戚の家で大事に育てられているジャックは幸せそうでしたし、いとこは3姉妹で僕たち兄弟より大人しく家も大きいのでジャックが暴れても大丈夫です。
遊ぶ場所もたくさんあります。
夜になり、帰る時間になりました。車に乗り込んだ僕は
「ジャックはいつまで帰れないの?」
と聞きました。
「夏休みが終わったら帰って来るよ。」
「本当!!やったー!!。」
車が出発します。
ジャックもみんなもお見送りしてくれます。
ジャック国道を走る
車が国道に入ると兄が突然叫びます。
「ジャックが追いかけてきている!!」
後ろを振り向くとジャックが全速力で追いかけてきていました。
リードを垂らしながら、車を僕を追いかけて来るのです。
「頑張れ!!」
ジャックはそのまま家まで着いてきて一緒に暮らしましたとさ、とはもちろんいかず、我が家の車は引き返します。
親戚の家に戻るまでジャックは車の後をハァハァと必死で追いかけてきました。
暗い電話
夏休みが終わり、秋も深まったころ、電話が鳴り響きます。
その鳴り方は周囲の温度を下げるような重い鳴り方でした。
親戚の家からでした。ジャックがいなくなったという報告で、散歩中に突然走り出したというのです。
1ヶ月後
僕は毎日、晩御飯のたびにポッキーがいつ帰って来るのか尋ねました。
その度に「もうちょっとで帰って来るよ。」という母親の言葉を信じて待ってました。
そして電話が鳴り響きます。
なんと、ジャックが帰ってきたと報告の電話がかかってきました。
しかし、かなり弱っていてそのまま亡くなってしまったという事でした。
ジャックが教えてくれた事
ジャックは僕にたくさんのことを教えてくれました。
- 子どもの無力さ
- 大人は嘘をつくこと
- 時間は戻らないこと
- 無償の愛
- 命の大切さ
今思えば散歩中に僕たちの車と同じような車を発見したのかもしれません。
僕たちを散歩のたびに探し回っていたのかもしれません。
僕が探しにいけば見つかったかも知れません。
まとめ
これは『ジャックと僕の物語』です。
今僕は子どもたちとミニュチュアダックスのポッキーと一緒に暮らしています。
きっと僕にとって最後の愛犬。
ポッキーは次男と同い年です。
きっとポッキーも無償の愛で、子どもたちにたくさんの大切なことを教えてくれているはずです。
文字通り『命』をかけて。